■ダイニー アリスインタビュー■

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劇団アランサムセ [ファウスト ―漂流者―]
アランサセ インタビュー (新宿)(構成:李 知映(イ・ジヨン))

アンニョンハセヨ(안녕하세요)。
日本語の中に朝鮮語が混ざっている稽古場。
ここは在日劇団アランサセの稽古場@新宿。

主宰 金正浩氏に聞く

―2014年度Alice Festival 参加作品である「ファウスト」は初演ではないですよね。

金  2005年度Alice Festival 参加作として上演したことがあります。今回の再演ではこの9年間をいかに取り込むか、1990年に実際に起こった「事件」をモチーフにしていますが、24年前の出来事を再現するのではなく、現在の問題と
して描くために少し修正を加えました。
金正浩
―劇団アランサセは在日の歴史、悩み、現状などについてよく考え、それを演劇というジャンルを使い表現しています。今回の作品はどのような思いでしょうか。

 我々はいつも「日本社会の中の在日同胞社会」という視点で作品を創っています。つまり、我々の生活やその中で提起されるいろいろな問題や感情、考え方などがメインテーマですが、それらと日本社会の在り方は密接に結びついていて、どちらか一方だけを描く、問題視するという偏りをしないよう留意しているということです。
今回の「ファウスト」は、一つは日本社会、特に為政者の歴史認識の問題を提起しながら、その状況の中で我々在日社会は「差別と権利」、「権利と同化」という問題にどう向き合っていくのかという想いで創っています。


―現在の日本における在日の状況は以前と比べるとかなり変わってきたと思います。作品の中にも「24年前とは違う」というセリフがありますが、、、そのような現状と、実際に演劇という創作活動との間、何か影響はありますか。

 24年間に世界的にも、朝鮮半島情勢においても、日本社会と在日社会においても大きな変化がありました。「大阪朝高女子バレーボール部出場辞退事件」が起きた1990年に東西ドイツが統一し、ソ連と韓国が国交を結びました。在日社会では朝鮮学校の高体連加盟問題や国公立大学の受験資格問題など権利獲得運動が高まる一方、権利獲得が「日本人と一緒」、さらには「日本人のように」をゴールとするような意識も、世代交代と時を同じくして出てきたと考えています。
世代交代は劇団の創作、役者陣にも及んで、結果的に朝鮮語にこだわった創作、上演から日本語での上演にこの間にシフトしたりもしました。
今回の「ファウスト」に関連しては、1990年には、日本の大学へ進学する朝鮮高校卒業生がさほど多くなかったのですが、今は多数を占めるようになった。日本学校へ行くことが悪いのではなく、日本社会でどう生きていくか、そのための進路選択をどうするか、といった部分で、「朝鮮人として」の帰属や志向に対する変化も確実になってきたという実感があります。この24年間の差異みたいなものが今回のテーマに絡んでくると考えています。

―阿部博士の役は日本人(経塚よしひろさん)がやっていますが、それの意図はありますか。以前の上演の時もそうでしたか。

 2012年、初めて日本人の役者さんが出演しました。在日同胞以外では2003年、韓国人(金世一さんと李知映さん)と一緒に舞台を作って以来ですね。
日本人を舞台に出した理由は、もう劇団に男性が少なくなったからという現実的なことからではありますが、私たちがやってる作品に対し、一緒に共感できる日本人がいれば、一緒に共演したいと思っています。
阿部博士役を演じている経塚よしひろさんは、自分は不器用だと言ってましたが、在日社会の歴史や実情を理解するために努力してくれて、理解をされてからはとても深い演技を見せてくれました。そんな姿勢は我々に強い信頼と尊敬の気持ちを与えてくれました。まさに「ファウスト」は、アベ博士の役をこなせる彼がいるから再演できたと言えますね。

―劇団はいつ旗揚げしましたか。そのきっかけは何でしょうか。

 1988年旗揚げしました。その1年前が劇団新宿梁山泊の旗揚げ、またその1年前に、朝鮮大学の先生(僕の演劇の先生ですが)から在日だけで演劇を作ってみようという話があり、1986年に、鄭義信作、金守珍演出であっちこっちの劇団で活動していた在日の人々が集まりましたね。その時僕は朝鮮大学の教員だったので、一緒に参加させていただきました。その時、唐十郎さんや蜷川幸雄さんなどがお客さんとして見に来られました。
そのような流れの中で劇団を旗揚げしました。うちの劇団は新宿梁山泊と違って、全劇団員を在日だけで構成し、朝鮮語で芝居を作ってみようと、始めたんです。

―Alice Festival にはいつからどのような経緯で参加することになりましたか。

 タイ二イアリスでは2001年かな、、その時初めて公演を行いました。その時以来からAlice Festivalに参加しています 。きっかけですけど、うちの劇団はずっと渋谷にあった小劇場ジァン・ジァンでやってましたが、そこが2000年に閉まることとなり、ちょうど新しい劇場を探さないといけなくなった時、新宿梁山泊の芝居をみにタイ二イアリスに行ったとき、丹羽さんが近づいてきて、タイ二イアリスでどうですか。と言われその場でこれからはタイ二イアリスで公演をすることを決めたんですね。もし、その時、そのような話がなかったらば、今はもう違う劇場で公演をしていたかもしれません。新宿は場所がいいですね。

―タイニイアリスを通じて得られたものはありますか。

金  劇団Mayなど在日劇団が大阪からきてタイニイアリスで公演しています。そのような同じ在日劇団を通じて刺激されたり、そこで交流をしたりしています。みんな、在日の生活や歴史を表現していますが、その表現方法が違ったりするので劇場を通じて、演劇文化が広がっていると思います。

―今後の劇団の活動について教えてください。

 未定ですが、将来的な夢としては南北朝鮮の演劇人が集い一つの芝居を創る、そういう場に居合わせたい、何らかの役割を果たしたいと願っています。
北と南が会い、一緒に作業するというのは近年他分野ではありました。例えば文学、映画、音楽など。でも演劇はまだやったことがないですね。演劇はライブだから難しいところがあるんでしょうかね。また、劇団としては今作家がないので、新しい作品がないことが悩むところです。南、北どっちの作品でも我々がやる意義のある作品があればやってみたいですね。歴史劇なんかでもいいと思っています。もちろん母国語で。

―ちょうど、母国語で芝居を作りたいという話が出ましたが、現在はセリフの99%を日本語ですが、朝鮮語をもっと使う作品が個人的にはみたいですね。

 そうなんですね。やはり、セリフを日本語でやることにより、朝鮮語の芝居が観たいと言ってくださるお客様も少なからずいます。いつかは、朝鮮語だけの作品をしないとな……と思っていますが……。2009年の朝鮮短編劇集(北の3作品)、その中の一つを朝鮮語で公演したことがありますが、それが最後ですかね。

出演者 経塚よしひろ氏に聞く
―阿部博士の役を演じていますが、劇団アランサセに出演することになったきっかけはなんでしょうか。

経塚  アランサセには今回の作品で2度目の出演です。出演者金恵玲さんの紹介で、昨年「ハモニカ長屋のどぶろくブルース」に出演しました。その時は、在日の役でのちに日本に帰化する役を演じました。今回は日本人役ですね。
経塚よしひろ
―以前、在日について考えたことはありますか。

経塚  出演する前までは考えたことがないですね。なので、「どぶろく」時から金先生に色々教えてもらいましたね。歴史、理由があって、今、こんなセリフがあるんだとその背景については色々と教えてもらいました。日本に在日がいることは知ってましたが、在日の歴史とか今の状況については全く知りませんでした。国という大きなことからは分かるけど、実感がなかったです。が、個人対個人は、日常的な関係になるわけなので、色んな話で、よく理解できるようになりました。

―アランサセが日本の劇団と違う面がありますか。

経塚  2回だけの出演経験ですが、わりと骨ごとというか、なんでしょうかね。この劇団のメンバーは自分たちが向かわなけれならないことについて、きちんと向き合っているような気がします。そんな真面目さだけではなく、芝居自体が面白いですね。
個人的な感想ですが、日本人が日本人であることに対してそんなに考えてませんが、それは当たり前だからかもしれませんが、なぜこうなんだろうと考える機会はあまりないと思います。自分が日本人だなと思うようになりましたね。

―最後にいらっしゃるお客さんに、唯一の日本人役者さんとして一言お願いします。

経塚  どのようにとってもらうかわからないが、日本人にもっと見てもらいたい芝居です。見てどのように感じてもらうかは個人任せですが、、、

(写真:上 金正浩  下 経塚よしひろ)

公演チラシ
アラン公演チラシ表 アラン公演チラシ裏

作:アランサ
演出:金正浩
出演:金順香、姜錦哲、金恵玲、経塚よしひろ、金娥由美、金正浩 ほか
上演:2014/11/27〜11/30
 

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